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不易流行インタビュー第四弾「色を合わせる仕事」-無地染め屋 近藤良治さん

「色を合わせる仕事」

無地染めとはどんな仕事ですか?との問いに、近藤さんはそう答えた。

今回は、東京都知事指定「東京無地染」の伝統工芸士、近藤 良治さんのインタビューをご紹介したい。

 

無地染めとは・・・

 

お客様の指定した色に、生地の色を合わせる仕事(印刷を依頼する際に良く目にする色見本と同じように、着物の生地にも色見本帳があり、見本の色の生地がサンプルとして貼られている。その色に、生地の色を合わせる仕事)で、これが難しい。

自分は二代目で40年この仕事をしているが、まだまだ先代のような仕事は出来ない。IMG_3146

 

素人考えですが、見本がある以上色の調合の割合は決まっているのでは?
(にっこりされて)良い質問だね。その通りなんだが、相手(生地)が毎回違う。   生機(きばた)の精練時間*(注)は気候(温度や湿度)や天候によっても異なり、染料の浸透率が違ってくる。浸透率は、同じ生地の端と真ん中など部分によって違うこともある。

また、生機の素材も、絹・綿のような天然素材もあれば、化繊(ポリエステルなどの化学繊維)もあり、その違いも考慮しなくてはならない。

 

無地染めの工程を簡単に整理すると、

  • 検品:白生地の精練時に生じるスレ、折れ、織る際に生じる傷などを点検する。
  • 地入れ:染める際に斑が出ないように、高温の湯槽で不純物を除去し、生地の表面を滑らかにする工程。その後水洗いを行う。
  • 染色:染料、助剤、温度、時間などに配慮しながら指定の色への染付工程。
  • 色合わせ:千差万別の色を、経験による勘と技で明度、彩度、色相の染液を創作することで見本と同じ色に染め上げる。
  • 水洗い:十分な清水で染色時の不純物を除去し、堅牢度向上のための後処理を行う工程。
  • 乾燥:脱水した生地を竿または張干しで自然乾燥させる。
  • 整理検品:製品に応じて糊付けなどを行い、湯のし機にかけ巾を整える。

の工程からなる。

 

※精練時間…精練とは絹糸の構造(セリシンとフィブロイン)である、セリシン部分を取り除く事を指します。このセリシンを取り除くことで、艶のない白色から光沢の素晴らしい白銀色へ変化し同時に柔らかな風合いが生まれます。

即ち、精練時間とはそのセリシン除去にかかる時間のことです。

 

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職人さんから学ぶ

経験と勘の世界だから、先輩の職人さんを見て学ぶ。それを見様見まねでひたすらやってみる。

最初の10年をどう乗り越えるかがひとつの目安。これを乗り越えないと何も始まらない。

特に、3年目までは立ち仕事に慣れることができるどうか。ずっと立って作業しなければならず、作業中は腰をかがめたままだったり、同じ姿勢が続く。これがかなり体に堪える。

 

10年くらいすると、少し解ったような気がする。

が、自分では解ったような気がしても、「色が違うのでは?」とお客様からクレームが来ることがある。

そこで、頑なにならず、何が違ったのかを真摯に考えることが大事。

ずっと作業していると、自分としては、合っている・間違っていないような気がしてくる。しかし、お客様は客観的に見本と見比べて、希望のものと違うと感じる。

お客様や先輩職人など、色の違いを注意してくれる人がいて、色合わせの技術は上がっていく。

トラブルは受け入れて理解して、しっかり解決に導かなくてはならない。IMG_3155

 

 

我慢して変化を待つ仕事

先代はどんな状況でも、3回の色調整までで、見本の色に合わせた。まだまだその領域には達していないと思う。

 

3回で合わせるにはどうすれば良いのでしょうか?

 

長年の経験から、色の変化を我慢して待つことができるかどうかが勝負どころだ。

大抵は焦ってしまい、「違ったから別の色を入れなくては」と調整を重ねてしまう。だが、色を入れてから、1時間、30分と時間の経過で色は変わる。その経過を見てさじ加減を行い、変化を予測する。

午前、午後でも変化の仕方は違うし、その日の自分の体調でも変わってしまう。その意味で体調管理も大事な仕事。

気が長くないとできない仕事だ。

そういう我慢が必要な仕事である一方、瞬時の見極めも重要。

低温、高温のどちらで混ぜるか、黒と黄色を混ぜて赤味をおさえ、などと瞬間で見切る、判断できないとダメ。

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先代は、研究も怠らなかった。白い紙などに色出しをして、調合したものの変化を確認したり、テンションのかけ方の工夫など常に研鑽を積んでいた。

 

 

不易流行…「待ち」から「提案」へ

これからの課題は、「末永くこの技術を伝承できるか?」だ。

以前と比べきものの需要は大幅に減り、問屋もどんどん無くなってきている。染色の機械もなくなりつつある。

以前は仕事が問屋などからどんどん入ったため、待っていても仕事があった。

今はお客様を待っていることから、提案することに挑戦している。

 

小物やスカーフなどを製作したり、草木染などの染色体験教室を開いたり、雑誌(和楽)にも掲載頂いた。

これからも創意工夫を続けてゆきたいと考えている。

 

東京で無地染めを行うのは難しい。伝統工芸士の資格保有者は近藤さんを含めても僅か5名しかおられない。

また、染色には大きな機械や釜などが必要で、クレーンなどの設備も無くてはならない。そんな設備を都内で維持するには広い敷地を確保することも必須となる。

近藤さんにはご子息がおられ、現在修行中とのこと。

 

伝統ある技術を継承するために、新しい試みに挑戦する近藤さん。

色を合わせるという、我慢と瞬時の見極めの技術に触れてみてはいかがだろうか?

http://www.tokyo-senshoku.com/partner/member/kondo/kondosenko.html

 

東京無地染めについては、東京都染色工業協同組合を参照されたい。

http://www.tokyo-senshoku.com/